▼最初の箇所へ 午前10時00分開議
◯議長(小谷茂君)ただいまから、本日の会議を開きます。
本日の議事日程は、県政に対する
一般質問並びに議案に対する質疑であります。
それでは、議案第1号から第20号まで、第33号から第67号まで及び第69号から第77号までを一括して議題といたします。
これより、
一般質問並びに議案に対する質疑を行っていただきます。
19番
伊藤保議員
◯19番(伊藤保君)(登壇、拍手)議員の皆さん、執行部の皆さん、おはようございます。
鳩山政権が誕生して6カ月余り、この間大きな期待と裏腹に、政治と金の問題等で有権者の皆さんの期待を失墜させている現状に対し、地方にあって党を支えている一人として素直におわびを申し上げますとともに、前政権を支えてこられました本議場におられます議員各位のこれまでの苦悩を改めて思い知る昨今であります。
それでは、通告に従いまして、3点の課題について順次知事に質問をいたしたいと思います。
新政権の政策については、
代表質問を初め
一般質問において各分野から議論されてきたところであり、中でも
地域主権についての議論は、我が会派の山田議員との間でかなり深い議論が行われてきたところでありますが、私は長年地方行政に携わってきた一人として、市町村の視点で
地域主権について改めて知事の認識をお伺いしたいと思います。
私はこのたびの政権でいろいろな改革がマニフェストに掲げられ、その実行に向け鋭意努力されている今日、中でも一番注目しているのは、これまでも議論されたところでありますが、鳩山総理が
地域主権改革元年と位置づけ、
地域主権の確立に向け
ひもつき補助金を廃止して
一括交付金化、国の出先機関を原則廃止、
地方交付税の
法定率引き上げなど、これまでの政治ではできなかった課題の改革への挑戦であります。今まさにこれらの改革を実現するために、象徴的な施策として国と地方の協議の場が閣議決定され、今国会に法案として提案されようとしております。今議会においても
代表質問を初め
一般質問で国と地方の協議の場の議論がありましたが、淡々としたやりとりで、私の受けとめ方では
平井知事はこのことに余り期待をされていないように感じられました。私から見れば国と地方の協議の場が設けられること自体大変なことで、今日までの我が国の政治、行政の長い歴史からして、まさに画期的な政策であると私自身思うのであります。
その具体的な例として、鮮烈に思い浮かぶのが
小泉政権下での三位一体の改革であります。
地方分権一括法が施行され、国、県、市町村は対等と言われながら、現実的には地方の声が無視され、一方的に交付税が大幅に削減された苦い経験があります。そういう意味を含めて国と地方の協議の場の設置は
地方自治体にとって悲願の政策であったわけであります。今、国と地方の協議の場が法制化されようとしているわけでありますが、
平井知事には国と地方の協議の場が設定されるという意義についてどのように認識をされているのか、改めてお伺いをいたします。
また、法案の中身を見てみますと、協議の場には原則国側から
内閣官房長官、
地域主権改革担当大臣、総務大臣、財務大臣、総理大臣が指定する国務大臣、地方からは地方六団体の代表が参加することになっております。協議の対象は国と
地方公共団体との役割分担、
地方自治に関する事項、国の政策に関する事項のうち
地方自治に影響を及ぼすと考えられるものと、大きく3項目であります。特筆すべきは分科会を開催し、特定の事項に関する調査、検討を行うことができると規定されていることであります。このことは前段でも申し上げましたが、
地方分権一括法が施行され
機関委任事務が廃止され、
法定受託事務に改められ、国、県、市町村は対当と言われながらも、まだまだ
地方自治体は仕事のやり方を国の法令等で束縛されたり、
ひもつき補助金等で現実的には国に管理されてきたのが実態であります。
全国知事会でも104条項の廃止を国に申し入れられていると仄聞をしているものの、いまだ具体的な方向は示されておりません。そうした中、こうした問題を対等な立場で、しかも平場で議論することはこれまで到底考えられなかったことであり、画期的と私が評したゆえんでもあります。
平井知事としては、国と地方の協議の場が開催されるときには何を一番の協議事項として望まれるのか、さらにどんな項目について分科会等で協議が進むことを期待されるのかお伺いをいたします。
次に、
気象観測設備についてお伺いをいたします。
以前この議場で
雪みちNaviの紹介と議論をいたしましたが、以来
雪みちNaviは好評を博し続け、年間80万件を超えるアクセスがあります。県でも一番利用されているサイトでもあります。数年前、積雪時に県道の峠の積雪状況を報告していただく
積雪観測員が高齢で離職されました。その後、後任者が見つからない中で雑談から始まったようなシステムでありますが、24時間いつでもどこでもだれでもどこからでも峠の道路状況を確認することができるため、鳥取県では大ヒット中のサイトであります。私の本音といたしましては県と開発した業者でパテントを取り、全国に売り出すとともに、少しでも県の収入にでもなればと思ったこともあるような安価で優秀なシステムであります。
ところで、このサイトにアクセスすれば峠における積雪状況を目で確認できる上、降雪、積雪、気温の状況を数値で確認できるようになっております。ここでお尋ねですが、これらの数値を表示するような県が設置する設備はどの程度あるのか、また、そのうち
気象業務法に規定する
気象観測機器はどの程度あるのか知事にお伺いをいたします。
続きまして、
QRコードについて質問をいたしますが、議長のお許しを得て参考資料をお配りしておりますので、議員の皆さんはそれを見ながら質問をお聞きいただきたいと思います。
バーコードは水平方向、いわゆる横方向のみについて情報を持つ一次元コードと、水平と垂直方向の2方向、いわゆる縦横に情報を持たせる二次元
バーコードがあります。スーパーやコンビニで商品を購入する際、レジで金額を打つことなく商品にはられている
バーコードにより会計が行われておりますが、この横長の
バーコードは情報量が少なくてもよい一次元コードでありますが、縦横に情報が入る二次元
バーコードには数百倍のデータを表現できるばかりか、平仮名、漢字、さらにはデジタル化した音楽や画像も表現できるというものであります。この二次元
バーコードの一種が
QRコードで、ほとんどの
携帯電話をかざすことによって必要な情報が得られるというすぐれものであります。
QRコードは
国際標準化機構で認定され、全世界で利用可能なパブリックドメインコードになっております。
県としても、最近とり
ネットモバイルを初めいろいろな分野で
QRコードの活用が目につくことが多くなってきたように思いますが、県としては
QRコードの活用方法をどのように考えておられるのかお伺いします。
以上で壇上での質問を終わります。
◯議長(小谷茂君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)
伊藤保議員の
一般質問にお答え申し上げます。
まず冒頭で、政治と金の問題についてのコメントをいただいたわけであります。これは今まさに世上随分と議論をされておるところであります。やはり政治家としての矜持としては国民から、住民から信頼されるものでなければならない、その際に、やはり国民の目線から見て金銭の問題というのは大きな問題である、それはすなわち国民の皆さんがそれぞれに自分自身にとってお金というものについていろいろと苦労したり、時にはいろいろと問題があったりということを体験的に知っているからであります。それから政治の透明性だとか、また政治に対する何か力が働いているのではないかとかいろんなことを想起させてしまう、思わせてしまうところがあるわけであります。ですから、ぜひともこの政治と金の問題については、一日も早く一刻も早く解決をするようにしなければならないと思います。ただ、一朝一夕でできることではないのもまた事実だと思います。これまでも自民党、公明党の政権のもとでもいろいろと政治と金の問題についての改善策を提案せざるを得ないような状況があったり、今も
民主党中心の連立政権でそういうような状況があるわけでありますけれども、いつまでもたってもこの問題が政界から離れないことに対する国民の不信こそ強いのではないかと思います。地方政治のレベルではおよそ考えられないようなけたの話が出てくるわけでありまして、本来ならばもっと別の政治のやり方があるのではないかと考えさせられることがしばしばであります。ぜひともこの機会に国会で大いに議論していただいて、抜本的な解決をしていただきたいと思います。
次に、国と地方の協議の場についてのお尋ねをいただきました。国と地方の協議の場の設置についてどういうふうに認識をしているのか、これについて余り評価していないのではないかというお話がありました。
私は本当の意味の地域が国と対等の
パートナーになるそういう政治構造、行政構造をつくろうと思いますと、この両方の
コミュニケーションがしっかりととれて現場の感覚が国政にも通じ、国のほうのいろんな地方に対する注文も本来はあるのでしょう、そういうものも地方側は受けとめて自分たちも自分たちの役割を果たす、こういう体制をつくらなければならないと思うのです。
これは各国でいろんな仕組みができているわけです。ドイツであれば連邦の参議院のほうで
地方代表が議席を持つことでこれを担保していく、国の予算から法律から、そういうものに対する事実上の拒否権のような形を持っているわけであります。フランスでも事実上は上院というものが市町村長などの
地方代表が多く入っているシステムになっています。これは間接選挙ということもありまして、そういう傾向があるわけでありますが、このようにいろんな形で地方側の意見が国政の中で担保される仕組みができ上がっているのだと思います。
我が国の場合は、圧倒的に
中央集権体制の中央側が強かったのが明治維新以来の姿だと思います。戦後に入りまして、憲法上
地方自治というものが制定をされたわけでありますし、そういう
地方自治の本旨にのっとった制度がつくられてきたわけであります。ただ、制度はできていても、では実質で本当の意味で地方側の
地方自治というものが真実担保されるような
税財政制度を常に国が補償してきたか、あるいは一つ一つの
制度改正に当たりまして、地方側の現場の混乱というものをしり目に見ながら勝手に国がやっていたのではないか、こういうことは枚挙にいとまがないわけでありまして、本当の意味で地方が対等な
パートナーになっていないということではないかと思います。ですから国に対して地方が協議の場を求めるということは、これまで長く地方側の課題でありました。その意味で、今回の協議の場の法定化というものは画期的な意味があるだろうと思います。
ちょっと沿革をたどってみれば、この国と地方の協議の場ということが大きく言われ始めたのは
地方分権の議論が本格化したことだったと思います。ただ、平成16年から18年といったような
三位一体改革がなされていたころ、このときにも国と地方の協議の場と称するものができました。内閣の中で主要なメンバーが地方側の代表と話し合うということがありました。小泉政権のもとでなされたこうした協議の場もあったわけでありますが、内実は、要は
地方分権をやれということを地方側が言う。そうだったら地方側のほうから
国庫補助金の削減のリストをつくってくれと、こういうやりとりになりまして、削減のリストを出しましょうと、現実に出てきたわけでありますが、結果としてはそれとは関係のないリストに基づきまして
国庫補助金の削減がなされました。さらに地方側にとって一番バイタルな問題でありました交付税のところ、これは協議対象として余り明確になっていなかったこともあるのかもしれませんが、年末にふたをあけてみますと既に大幅削減が決まった格好になっていたと、こういう経緯がありました。ですから、協議の場は確かにできたわけでありますけれども、ある意味、国のほうの
帳じり合わせに利用されたのではないかと、そういう嫌いもないわけではなかったと思います。ですから、大切なことは、そういうことは当たり前のこととして、この国の仕組みの中で協議の場を設置することだと思います。法律で定められるということは義務化されるわけであります。内閣といえども国会が決めた法律に拘束されるわけでありますから、その意味で大変な前進であることは間違いないと思います。
問題はここから先のことだと思います。この辺を私が議場で申し上げるので期待していないのではないかというお話が出たのではないかと思いますが、協議をした結果が国政の中に確実に反映されるような仕組みが次にないといけないわけであります。今回の法律案の中でいろいろとやりとりがありました。地方側の意見がほぼ取り入れられたと私は思います。
つまり協議項目も地方側のほうではかなり幅広い協議項目を示していました。それが読めるような形で今法案が制定をされています。また、現実問題、六団体の代表だけで話し合いをするというのではとても細かいところといいますか、制度の微細に至るまでらちが明かないわけでありまして、分科会を設置すべきだということを私も知事会の任に当たっておられます皆さんに申し上げていたわけであります。この
分科会設置も国側は大変な抵抗が実はありました。ありましたけれども、最終的には
分科会設置を認めるということで折り合ったわけであります。このようにしてかなり地方側の要求をのんだ形にはなっていますけれども、最終的に同意権を地方側に与えたかというと、そういうわけではありません。ですから、協議はしなければならないという義務があります。協議の結果に対する、そこに出席した議員には尊重義務があります。ただ、
内閣総理大臣を
メンバー構成に加えるようにという地方側の要求は最終的には入っておりませんで、出席することはできるということになりましたので義務的にはなっておりませんので、そういう意味で本当にそれが担保されるのかどうか、まだ不安があるのが実態かなと思います。問題は実践行動でありまして、ではこれからどういうふうに協議が回ってくるか、そこに注目をすべきではないかと私は申し上げてきたところであります。
国と地方の協議の場につきまして何を一番の協議項目と望み、どういう協議が進むことを期待するのかということであります。この協議の内容として、鳥取県の執行部として非常に気になりますのは、やはり今焦眉の課題であります
地方分権、
地域主権改革のことは、これは第一番目の協議事項としなければならないと思います。なぜなら、大きな
制度改正によってドラスチックな変化がやってくる可能性があります。必ずしも財源が潤沢な状況ではありませんので、国、地方を通じてどうやってスリム化をするかということが当然ながら背景にありながらの議論になります。そういう意味で、特に小さな団体がきちんと仕事ができるように担保されるかどうか、これは不安があるところでありますので、ぜひとも協議の場としてしっかりと機能を果たしていただきたいと思っております。
このほかにも、例えば社会保障の関係、これから
高齢者医療の問題だとか介護のあり方だとか、また児童福祉といったような子供たちの問題など焦眉の課題がございます。
制度改正が近々に予定されているものもございます。こうしたものも今までは国から一方的に成案が示された格好でありましたけれども、タイミングが大切でありますが、その前の段階で地方側から意見を述べる機会を担保すべきだと考えております。
また、そのほかにも地方の出先機関、これを廃止をしていくということ、これをぜひに求めたいと思いますが、これも地方側に対して大きな影響を与える可能性があります。この辺などを丁寧に、まずは分科会を設置するなどをしてやっていただきたいと考えております。
次に、
雪みちNaviにつきまして、このナビに関連するなどして
気象業務法に規定する
気象観測機器がどの程度あるのかというお話でございます。詳細は
県土整備部長から申し上げたいと思います。
雪みちNaviは非常に便利なサイトになったと思います。これは職員とか現場の提案が生きた格好のモデルだと私も思っております。現に自分自身もプライベートに見ることが多いのはこの
雪みちNaviというサイトが含まれておりまして、なぜなら、見れば一目瞭然で現在の降雪状況がわかるわけであります。またこれとよく似たサイトで、河川の今の流量の状況とか、そういうのもリアルタイムで示すような情報がサイト上にございます。こうしたサイトは、住民の皆様に現実にどうなっているかということを目で見ていただいて、それで自分はこうしなければいけないという、こうすべきだということの対策を立てやすくするには非常に効果のあるサイトだと思っています。例えば、雪道の状況によっては自分の車だったらこういう装備をしなければいけないとか、あるいは自分はもうきょうはやめておこうかとか考える人もおられるでしょう、あるいは交通手段としてそれを見て、もうきょうは飛行機もあきらめたほうがいいのかもしれないと、さっさと列車に切りかえるかとか、さまざまな用途が出てくるわけでありまして、いい意味でIT化のモデルになったと思っております。
これについては
気象観測機器の設置を当然ながらしなければいけないわけでありますけれども、220基設置をしまして、そのうち気象関係の法制で一定の義務づけがあるのが165基という状況でありますが、詳細は部長のほうから申し上げたいと思います。
次に、
QRコードについてお尋ねをいただきました。
QRコードは大量の情報が入れられる大変便利なものでありますが、その活用を県としてどういうふうに、どのようにしているのかということであります。
今でもとり
ネットモバイルでありますとか防災情報でありますとか、また県のサイトから飛べるようなバスの時刻表を判別するそういうサイトなどにつきまして、この
QRコードを活用させていただいております。大変便利なものであります。今や
携帯電話というのはお財布だとか、あるいは腕時計などと同じように外出するとき、いろんな職場でもそうでありますけれども、常に携帯をしている、持っている、それが標準化されつつあると思います。ですから、いわば
ハイテク機器を常に持ち歩くような時代になったわけでありますので、この
ハイテク機器を単なる電話だけではなくて、情報媒体として情報発信に県なり
公共セクターが使わせてもらうというのは十分考えられることだと思います。
QRコードの中には2通りの役割があって、1つはその
QRコードの中に
インターネットサイト、ウエブサイトの名前を埋め込んでおきまして、それでそこにアクセスいていただいていろんな情報検索をしたり自分なりの情報収集に役立ててもらうということがあります。そういう使い方と、あともう一つは
QRコード自体に文字情報を埋め込んでおいて、その情報を読むことで、例えば観光地に行けば、ここはこういうような、水深が何ぼであって、それからこの岩はどういう成分であって、これはどういうふうにしてできてというようなことの情報を瞬時に得ることができる、こういうようなことになろうかと思います。しかも、それを
携帯電話のデータの中に入れて持ち歩くことができるわけでありますので、後々にその情報をリピーターとして使ってもらうことも可能になってくるわけであります。
こういうように大変便利なものでありますので、今それぞれの部局ごとに考えてこの
QRコードというのを設定をしておりますけれども、さらに計画的といいますか、体系的に県民の皆様や観光客、あるいはいろんな事情で鳥取県のサイトを訪れる人たちなどに使っていただく必要があるものを整理をしていく必要があると思います。まだまだできていないところは正直あるかと思います。まだ我々も試行錯誤の状態であると思いますが、ぜひ体系立った活用ができるように庁内で体制を整えてまいりたいと思います。
◯議長(小谷茂君)
谷口県土整備部長
◯県土整備部長(谷口真澄君)
気象観測設備の現状についてということの質問に対してお答えいたします。
本県は防災体制とか除雪業務、これを実施する上で気象状況を把握するための
気象観測機器といたしまして、県の
防災情報システム、それから
雪みちNaviなどに220基を設置をしております。その内訳は、温度計52基、積雪計52基、雨量計61基、水位計55基というものでございます。これらのうち
気象業務法に規定されたものは水位計の55基を除きまして165基というものでありまして、そのうちに
雪みちNaviが54基含まれているというものでございます。
◯議長(小谷茂君)19番伊藤議員
◯19番(伊藤保君)知事、答弁ありがとうございました。私も
コミュニケーションの場となるよう、本当にこの協議の場というのは期待しているわけでありまして、充実したものになるということを願っております。
先ほど申し上げましたように、国と地方の協議の場が公的に整いますと、地域のことは地域で考え、地域で決め、地域で責任を共有するという、まさに現政権が目指すところの
地域主権が急速に加速されていくものと私は思っております。しかし、県下の市町村の状況を見回してみますと、
地域主権に向け急速にアクセルを踏み込むことができる環境にあるかと申し上げれば、残念ながら
地域主権への認識並びに執務体制は、かなりまだら模様になるものと思っておりますし、県議会で行われているような
地域主権に向けての議論や県では設置して協議を始めている
地域主権研究会などの取り組みが十分ではない状況にあると私は思っております。
このように、市町村の裁量が大きくなるという期待感が高まる一方で、市町村の自主的な取り組みは低く、まだら模様の状態のまま
地域主権が進めば、市町村間で
公共サービス全般にわたり格差が大きくなるという懸念が生じるわけであります。知事として市町村の意識改革を含め、その対応をどのように考えておられるのか改めてお伺いをしたいと思います。
次に、
気象観測業務法第6条並びに第9条に
地方公共団体が教育や研究目的以外の
気象観測を行う場合並びに災害の防止に利用することを目的として
気象観測を行う場合には、正確な観測、観測方法の統一性を確保するため、
気象観測施設設置の届け出を
気象庁長官に行うことが義務づけられている上、観測に適したものであるかの検査、要するに検定に合格したものでなければならないと明記されております。
雪みちNaviは
気象観測業務法に定められた検定を受けなければならない
気象観測施設に該当するものと私は思いますけれども、県の見解を改めてお聞かせいただきたいと思いますし、また気象庁からこのことについて、これまで指導があったのかなかったのか、あわせてお伺いをしたいと思います。
次に、
QRコードについての追及に入ります。私が
QRコードについて質問をいたしましたのは、その活用方法に無限の可能性があると思うからであります。ほとんどの人が持っている
携帯電話さえあればいろいろな情報を入手することができるからであります。
昨年、
常任委員会で函館に出張したときのことであります。空港を出てすぐ目に入ったのは市内の
観光案内板でありました。その案内板にかかれていた名所の横にこの
QRコードです。早速携帯で情報を検索すると名所の詳細が記載されておりました。これも一つの活用方法かと思いましたけれども、農産物の栽培情報、それから包装紙に特産品の食べ方、環日本海交流時代を迎えた今日、観光地の案内板を韓国語、中国語、ロシア語で表示するとか、観光地の童謡や民謡を音楽で紹介するなど、まさに限りない活用の夢が広がると思いますとともに、その活用によっては消費者や観光客としっかりとした信頼関係も私は築けるものと思っております。さらに行政分野においても、すべての交通標識に貼付することにより、交通事故等のときの位置情報として活用できるとか、県への申請書類の処理状況の管理など県民への行政サービス向上に向け、いろいろな活用ができるのではないかと思うのであります。現状を申し上げれば、使途については、先ほどありましたように各部署任せで、把握されているところが全くないようであります。利用価値が多岐にわたる反面、用い方やコンテンツを間違えたら大変なことになる危険性も一方であるわけで、県のどこかで
QRコードの集中管理担当をつくり、点検や活用の方法を促すことを考えられたらいかがなものかと思いますけれども、知事の所見をお伺いします。
◯議長(小谷茂君)
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)重ねての御質問にお答え申し上げます。
まず、国、地方の協議の場が設置をされるわけでありますが、市町村の裁量が大きくなるという期待感の一方で、まだら模様の状態になってしまうのではないか、市町村格差が拡大するのではないか、意識改革を含め市町村に対する対応をどういうふうに考える必要があるのかというお尋ねでございます。
当然、
地域主権が進んでまいりますと、それぞれ地域の力量に差があれば、それが住民生活にも影響してくることは当然考えられようかと思います。ですから、その
地域主権に基づく制度改革の設計図は慎重につくらないといけないところがあると思います。理念で割り切るのは簡単だと思うのです。例えば、これはもう市町村レベルでやればいい、これは県レベルでやればいい、だからこのことは全部県はやらないで、市町村がやるということにしましょうと。ただ、現実問題として市町村には大きさの違いが随分あったり、福祉行政でいえば障害者福祉のどれだけ専門的な人間がいるのか、こうした人に対応できる人がちゃんといるのかというのは、現状でも市町村によって力量に差が随分あります。そうなりますと、国のほうは今までの様子ですと、では市町村は合併して大きさを変えればいいということを言うのでありましょうけれども、ただ、市町村が合併することは逆にサイズが大きくなり過ぎて声が届きにくくなるという、そういうデメリットも同時に生じるわけであります。ですから本当に合理的に考えるのであれば、人材が得られるところがその仕事をやるのが正しい選択肢だということもあり得るわけであります。市町村のサイズによっては県のほうが市町村の委託を受けてやるとか、あるいは市町村が共同でお互いに協力し合いながらこういう人材配置をしましょう、そこに県も入っていって、市町村と県との共同機関をつくってそれで処理をするというようなやり方もあってもいいのだろうと思います。
ともかく、最終的に出口ベースで住民の皆さんにとって一番いい姿の行政サービスの提供が効率性のことも十分考えた上でなされる、しかもそのサービスを民主的にコントロールできるアクセスも近くの窓口に保障されるというのが必要ではないかと思うわけであります。これは、結局現場主義でいろいろとやっていかなければならないわけでありまして、まずは市町村の自覚と市町村自身の改善、改革を求める必要があると思います。あわせて、市町村の力量でできないことがあるのであれば県も一緒になって考えていく、市町村同士で協力をし合うことなどの新しい方策も導入していくことが必要ではないかと思います。今、我々も
地域主権の研究会をやっているわけでありますが、議論するとそういう方向に進んでいくわけでございまして、市町村とか県が共同して設置をする協議会の法人格がついたようなバージョンの団体をつくってみてはどうかとか、そういう議論が始まってきております。
ただ、今
地域主権改革の議論は急速に進んできます。ですから、それに伴って自治法改正の議論、基本法制の改正の議論も進んでまいります。これは市町村の権能についての話も当然ながら出てくると思いますし、議会のあり方なども協議項目に入ってくると伺っております。急速に進んでくる議論の状況を市町村の皆様にも御自身で当然ながら情報をキャッチしてもらう必要があると思いますが、県内でも
地域主権の議論が今こういうふうになっていると、県全体でこういうような声を逆に今の検討が進んでいる国のほうの委員会なりに届けようではないかとか、そういう議論をしてみたり、また
地域主権はこういう方向に進んでくるのだから、我々のほうではこういう分野で体制をぜひつくっていこうと、必要があれば県も入るような形でつくってもいいとか、そういう協議をこれから活発にやらなければいけないだろうと思います。そういう意味で、これから
地域主権の議論が進んでくる中で市町村との話し合いを密にしたり、啓発の機会を十分につくっていく必要があると思います。
次に、
気象業務法との関係で重ねてのお尋ねがありました。検定を受けなければならない観測施設設置に当たるのではないか、県の見解はどうか、気象庁からの指導はなかったのかという点でありますが、これも
県土整備部長のほうからお答えを申し上げたいと思います。
今までのところ、例えば河川情報などの災害関係では受託事業者からの指摘もありまして、そうした
気象業務法との関係での届け出なりということは済ませてきているところではありますけれども、
雪みちNaviのほうは残念ながらそれができていないということでありまして、改善を要するところであろうと思います。
悩ましいのは、片方で機器の更新とか結構なお金のかかる話にもつながるところがございますので、そうした状況も横にらみはする必要はあるかと思いますけれども、我々としては改善すべきこと、改めるべきことは改めていく必要があるだろうと思っております。
最後に
QRコードの活用についてお話をいただきました。例えば農産物の栽培情報でありますとか、あるいは交通標識に設置をして位置情報を入れたらどうかだとか、観光情報を看板に入れる際に英語だとか韓国語だとかロシア語だとか、そういうものが出てくるように
QRコードを設置してはどうだろうかとか、非常に示唆に富んだお話だと思います。私もせっかく
QRコードができているわけでありますから、県の持っているとりネットなどのサイト情報と複合させることで、飛躍的にこの地域の観光だとか、あるいは物産の価値が高まる可能性があると思います。例えば、お店に行って
QRコードに当ててみれば、これはどこのだれさんがつくったものですよと、それに対して農薬はこうですよとか、あるいは牛であれば、これはこういうような来歴の牛ですよとか、そういうことがわかるようになれば安心して消費者の方も食べられるということになりますし、だからこそ買ってみようかという人が出てくるわけでありまして、付加価値にもつながるものではないかと思います。そうした
QRコードの無限の可能性といってもいいと思いますが、これを鳥取県として率先して使ってみる、やってみるというのは非常に値打ちのある話ではないかと思います。
今、県庁の中にIT担当の参事監がいるわけでありまして、ITの活用についていろいろと計画を練っているということではありますけれども、私はそう悠長なことを言うよりも、
QRコードに絞ってプロジェクトチームを設置するなら設置をして、この活用を全庁的に考えてみたいと思います。その組織などは、今の時期でありますので現員の中でということになろうかと思いますけれども、ITにも通じた者もおります。そうした人材と、それからこのようなことであれば非常に使い道があるのではないかと、若手の方々を中心としていろいろとアイデアに飛んだ話があろうかと思います。
QRコードを活用したIT先進県づくりについて、県職員だとか県民の方にも意見を募集するなどをして、早く設置できるものでありますので、速やかにそうした推進体制づくりができるように、組織立った体系的な活動をしてまいりたいと思います。
◯議長(小谷茂君)
谷口県土整備部長
◯県土整備部長(谷口真澄君)
気象業務法に定められました届け出、検定の状況についての補足のお答えをしたいと思います。
気象業務法に規定された届け出、検定を要する
気象観測機器は165基ございます。そのうちの県の
防災情報システムに設置しているものが111基ありますが、これについては届け出を済ませております。
雪みちNaviに設置している54基、これはまだ届け出を行っていないという状況でございます。また、165基のうちの104基はまだ検定を受けていないという状況でございます。
気象庁のほうのお話でございますが、平成20年度に気象庁のほうは気象庁以外の他の機関の
気象観測機器の機器データを活用していきたいという目的を持たれまして、アンケート調査を実施されているというふうに伺っております。しかし、今日まで気象庁から県に対して届け出とか検定について、特に御指導はないという状況でございます。
◯議長(小谷茂君)19番伊藤議員
◯19番(伊藤保君)ありがとうございました。
これまで市町村の認識について議論をしてまいりましたけれども、やはり一番重要なのは住民の皆さんの意識改革であろうと思うのであります。県下でも合併から4年後の町長選挙等、それから議会議員選挙が行われておりますけれども、無投票を否定するわけではありませんけれども、余りにも無投票が多いことはお任せ民主主義といいますか、有権者の皆様がなかなか脱皮し切れていないのではないかと心配するものであります。
特に、
地域主権の目玉である一括交付金制度が導入されたときには、市町村の認識次第では活用の方法が変わってくるものと思いますし、民意の熟度の程度によって住民への行政サービスの質そのもの自体にも大きく作用していくものと思います。最終的には、民意の熱度が低ければ、結果責任だけが住民にはね返る懸念も想定されるわけであります。
大きな成長が望めない中、本当に手の届く幸せを実践できる、そんな地域づくりができる今がチャンスであると私は思っておりますし、この可能性が、この
地域主権には秘められていると思っております。逆に何もしない自治体は、まさに不信感だけが住民に蔓延し、地域が崩壊の一途をたどる可能性もあると思っております。
民意の醸成は、本来は市町村の役割になるわけでありますけれども、このように
地域主権に向けた民意の醸成も今喫緊の課題であると思いますけれども、知事の所見並びに県として今後、計画しておられることがありましたらお聞かせをお願いしたいと思います。
次に、
気象観測業務法に定められた
気象観測施設の設置に該当するということで先ほどありましたけれども、しなければならないということがなぜここまでわからなかったのでしょうか。多分安易に考えられていたのではないのかなとは私自身思いますけれども、要するに積雪情報ですから、そんなに深刻な届け出をしなければならないという部分がなかったのかなと思いますけれども、一般的にはアクセスの非常に多いサイトでありますし、より信頼されるサイトとして情報を提供するためにも、やはり早期に定められた検定を受けるべきだと思います。県の対応をお願いしたいと思います。特に、今度は防災課のほうで一元化も計画されているようでありますし、しっかりとした情報をきちんと提供できるようなシステムにしていただきたいと思います。知事の所見を求めたいと思います。
◯議長(小谷茂君)
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)まず、
地域主権につきまして民意の醸成も必要ではないか、また県として計画しているようなことがあれば知らせてほしいというお尋ねをいただきました。
何のために
地域主権をやっていくかということでありますが、これは住民のためであります。例えば、国の地方出先機関を県なり市町村なり権限移譲をして移していこうというお話があります。これは、結局国の出先機関でありますと民意が届きにくいわけです。そこで何をやっているのかということについてコントロールがしにくい、その情報すら得にくいということがあります。仮に県であれ市町村であれ、そういうところが所管をしているものであれば、それは当然ながらこういう議会の場などで平場で議論することになりますし、住民に身近な窓口もできまして、そこについて物申していくこともやりやすくなるわけであります。ですから、住民の皆さんがそうした地域のさまざまなツールを自分たちの手の上に乗せて、それでそれを使っていくという、それができるようにするために
地域主権改革をやるわけであります。この辺の意識がまだまだ欠けているのではないかというのはおっしゃるとおりだと思います。遠い世界の中で国と県と市町村が権限争いをしているのではないかとか、そういうように見えるところがあるわけでありますけれども、そうではなくて実は自分たちのためにこの議論が行われているということを知っていただきたいと思いますし、それをきっかけにして、では自分たちがこういうまちづくりをやってみようとか、こういうようなNPOを立ち上げて活動してみようかとか、行政との協働について考え直してみようではないかとか、そういうように発展していかなければいけないのだと思います。それでこそ初めて地域の力が上がってくるのだと思います。こうした観点で
地域主権について、例えばタウンミーティングをやるとか、そういうアイデアを我々のほうでも今考えているところであります。これから
地域主権の議論が進んでいくに従って県なりの広報といいますかPR、住民の参画を促すような、そういう機会をつくっていきたいと思います。その詳細は企画部長からお答えを申し上げたいと思います。
次に、
気象観測業務法に定められた
気象観測施設設置をなぜ届け出していなかったのかというようなお話がございました。
これは、議員もおっしゃるように信頼されるサイトにならなければなりませんので、正すべきことは正さなければならないと。これは改めていきたいと考えております。
ただ、1つ申し上げれば、例えば気温をはかる温度計を設置することも
気象業務法で届け出をして検定を受けなければならないということになるわけでありますが、本当にそこまで気象庁が国の規制を張りめぐらさなければならないのかなという気もしないでもないわけであります。もっと現場だとか、あるいは地域の仕様に任せていただけるべきものも本来はあるのではないかと、規制緩和の可能性についても国に訴えかけたいなという気持ちはあります。ただ、現行法の中で定められて我々も仕事をしておりますので、このことについては、改めるべきことは改めて、信頼されるようなサイトを目指してまいりたいと思います。
◯議長(小谷茂君)林企画部長
◯企画部長(林昭男君)
地域主権の確立に向けた民意の醸成についての補足の説明をさせていただきます。
民意の醸成につきましては、議員からもお話がありましたように市町村の役割ということで、市町村のほうでは住民自治基本条例をつくるとか、あるいは地域での地域振興協議会というような地域単位の取り組みで自治について住民の皆さんが話し合っていただくと、あるいはそういう仕組みをつくるというような取り組みもされていますし、また智頭町のように百人委員会をつくって住民でそうしたことを考えていこうとか、あるいは北栄町でもみずから事業の仕分けを住民を交えてやっていくと、そういうような取り組みで住民の意識醸成を図っておいででございます。県といたしましても、民意の醸成につきまして来年度でございますが、県民の日の記念フォーラム、9月12日に予定をしておりますが、そうしたところでは鳥取力の創造運動ということをテーマにして、こうした地域のことをみんなで考えるというようなこと、あるいは自治会等と一緒になりまして住民自治について考えるフォーラムというようなものも計画をしているところでございます。また、知事からもお話がございましたが、住民自治を考えるタウンミーティングというようなものも実施をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
◯議長(小谷茂君)19番伊藤議員
◯19番(伊藤保君)ありがとうございました。
地方主権についてのいろいろな議論をしてまいりましたけれども、なぜこのような議論をしたかといいますと、
地域主権の実施主体者は市町村でありますし、国と地方の協議の場に代表で出るのは地方六団体のうちの、要するに市町村が4団体を占めるのですよ。確かに代表が国と協議、議論をするかもしれませんけれども、まさにその地方で、鳥取県の市町村の意識がしっかりしないと国に届かないわけです。そういう意味も含めて、私は今の現状では非常に不安が大きくてとても心配ということで知事と議論をさせていただきました。
知事も議論の中で話がありましたけれども、私の要望としては県で取り組まれている
地域主権研究会のようなものが県の呼びかけで市町村と共同で開催できないものかと思います。そうした機関ができれば、将来的に市町村が共同で行う事業とか、県が補完すべき事業とかもっと具体的に前向きな議論が進んで、まさに
地域主権時代に向けた地域づくりができるものと私は思いますけれども、知事の所見をお伺いしたいと思います。
最後になりましたけれども、昨年の暮れに政権交代したことにより、「山陰道遠のく」「20年代開通絶望」等、マスコミの皆さんにはまことしやかに掲載されました。まさに今議会のある
代表質問で山陰道の予算確保の見通しが立ったのにもかかわらず厳しい非難がありました。とても残念な気持ちでいっぱいでした。私たちは初めて経験する責任政党としての立場の中、前政権を支えてこられた皆さんと同じように地域の課題としてとらえ、新政権の新しいルールに従い、国交大臣を含め政務三役に、今日まで山陰道の完成がおくれてきたことによる地域経済への影響、そのためにミッシングリンクの解消等をあらゆるツールを活用しながら鳥取県としての思いを伝え、きょうを迎えています。私たちは鳥取県としての熱意と思いが政府・与党の皆さんに一定の理解がされたものと思っています。しかし、私たちは最終的な箇所づけが発表されるまでは気を抜くことなく、その対応を見守っていきたいと思っております。
私は、
地域主権の時代にあって、鳥取県の課題として共有できるものについては政党の枠を超え、地方の課題、地方議会の課題としてとらえ、ともに地方発展のためにでき得る連携は最大限密にしながら、これからも気を引き締めて邁進したいと考えておりますことを申し上げ、
一般質問を終わりたいと思います。(拍手)
◯議長(小谷茂君)
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)まず、
地域主権につきましては、おっしゃるように市町村が恐らく主役にならざるを得ないことだと思いますので、市町村の意識をもっと高く持っていただく必要があると思います。その意味で、これからも市町村との
コミュニケーションを密にして、私は鳥取県の場合は、鳥取県自身も小さな団体でありまして、市町村の距離感も近いところでありますから、市町村と一緒になって地域の課題を解決していけるのではないかと思います。現在、4つの地域ごとに市町村と共同しまして事務の共同化だとか、そうした課題を話し合うようになりました。この具体的な成果として、まず日野郡から先行しまして福祉関係でありますとか、あるいは事務用品等の発注とか共同化していくことを始めようとしております。こうした取り組みをさらに
地域主権の議論と並行して強化をしていったり、今おっしゃったように、
地域主権についてまさに語り合う場という性格も持たせながらやってはどうかと私も思いますので、そういうようにして市町村と
パートナーとしてやっていくような
地域主権議論の推進を図ってまいりたいと思います。
また、その後コメントがありましたけれども、今回の道路整備の問題でございます。私も11月ですか、国側からまず第一次的な内々示が示されたときに仰天をしたわけであります。それでふっと頭をよぎりましたのは、山陰道など国の基幹的なネットワークをこの鳥取県で整備する最大の危機がやってきたなと正直思いました。およそ半分に減らすというような議論でございましたので、もしこういうことであれば山陰道などの道路整備はたちまちにしてとまってしまう。それは単に予算上の問題ということではなくて、国のほうが順番待ちをしてきたところに公正にその整備を進めていく、そういう責務を放棄したに等しいのではないかと義憤に近いものを感じることすらありました。その後、これを何とかしなければならないということで、民主党県連の皆さんだとか経済界のいろんな方々と、市町村もそうでありますが連携をしまして、県内一体となってこれを盛り返すように努めていったのは事実であります。その結果として36%程度、31億円の復活が認められて今日まで来たわけであります。何とか平成20年代に山陰自動車道をつないでいくそのめども立ちかけたかなというように思います。少なくともひところ完成が危ぶまれた最大の危機と言っていいような状態からは脱することができたというように考えております。
これからも、党派を超えてこうした課題は実現を目指して我々はやっていかなければならないと思っています。これは地域全体の課題でありますので、私も皆様とともにこの成就に向けて、こうした重要課題の実現に向けては全力を挙げて邁進をしてまいりたいと思います。伊藤議員もぜひお体に気をつけて頑張っていただければと思いますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
◯議長(小谷茂君)33番上村忠史議員
◯33番(上村忠史君)(登壇、拍手)通告に従いまして2点、知事並びに教育長に質問をいたします。
まず、がん医療と粒子線治療について知事にお尋ねをいたします。
50歳前後で死亡する人は、その原因は自殺とがんが多いと友人の医師から伺ったことが以前あります。確かに、年代別死因に関する厚生労働省の資料を見ましても、40代では1位ががん、2位が自殺、3位が心疾患であり、50代では1位ががん、2位が心疾患、3位が自殺となっております。40代、50代の一番働き盛りの方々の死因ががんが一番多いということで、3割から4割以上も占めているということは、これは改善しなくてはならない社会的問題であると考えます。私も、ここ5年ほどで10名ばかりががんで命を落とされまして、悲しい別れをしてまいりました。全年齢層で見ましても、がんは心疾患、脳卒中とともに我が国の死因の三大要素であり、その中で一番多いのはがんであります。
このため、我が会派自由民主党におきまして、3月4日、民間シンクタンクの日本医療政策機構の埴岡健一がん政策情報センター長をお招きし勉強会をいたしましたが、その中で埴岡先生は県の施策及び県民の方々の意識が低いということを指摘され、早期発見が何より大切だというぐあいにおっしゃっておりました。しかし、本県ではがんの検診率は全国平均よりも高いのでありますが、死亡率も全国12位と、全国平均よりも高いという現実があり、このことも勉強会で話題になったところであります。つまり、検診を受ける時期が遅いなど検診自体に問題があるのか、あるいはまた、病院が行う治療自体に問題があるのか、いずれかではないかと思います。
県では鳥取県がん対策推進計画やアクションプログラムを策定し、がん対策の推進を図ってきておられますが、知事は検診受診率も死亡率も高いという現状をどのように分析していらっしゃるのかお尋ねをします。
また、がん対策の現状に課題や問題点があるならば、どのように改善していかれるおつもりなのか、あわせて知事の御所見を伺います。
次に、教育につきまして、本県教育と道の学問についてお尋ねをいたします。
昨年の末、岬龍一郎さんが解説いたしました、福沢諭吉の「学問のすゝめ」を読みました。福沢諭吉は「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」の言葉で有名ですが、この本の中で、自立・独立自尊の精神を繰り返し繰り返し述べておられます。学問には芸と道があり、芸とは法律、医学、科学、芸術などの知識を深めるもの、「道」とは哲学、倫理、文学、歴史などの人間や人生を探求するものという記述があり、道の学問の大切さを再確認させられたところであります。
もともと、芸と道は、医とともに教育の三本柱であります。医をもって健全な身体を育成し、道をもって健全な精神を育成し、芸をもって社会貢献する人間を育成することが真の教育であると考えます。そうした意味におきまして、中永教育長が日ごろから訴えておられます、知・徳・体のバランスのとれた教育というものは、私も非常に高く評価させていただくところであります。
さきの大戦の前までは、政府が国と家族、個を直接結合し、国が公に芸すなわち知と、道すなわち徳を説いてまいりました。しかし戦後は、国と個の分離が進み、道が公に説かれなくなり、学校で芸だけが説かれる結果、他人に迷惑をかけなければ何をしても個人の自由だといった道を外した大人や子供がふえているように思います。このため、今こそ人間や人生を探求する道の学問が大切であり、本県としても重点的に取り組んでいかなければならない分野であると考えますが、中永教育長の御所見を伺いまして、壇上での質問を終わります。
◯議長(小谷茂君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)上村議員の
一般質問にお答え申し上げます。
私のほうにはがん医療についてのお尋ねをいただきました。まず第1点目として、鳥取県でがん対策を推進しているけれども、検診受診率も死亡率も高いという現状をどういうふうに分析をしているのかというお尋ねをいただきまして、さらに課題、問題点があるならばどういうように改善していくべきなのかというお尋ねをいただきました。
先日、埴岡先生が会派のほうの勉強会の後に藤井会長と御一緒に私のほうにも来ていただきまして、意見交換もさせていただきました。正直な話を申し上げれば、このがん対策については、今我々はまずは分析をしっかりやることと、それから対策をきちんともう一度立てるべきではないかと思います。
今まで我々のほうでもいろんな対策をとってきました。これは私がこの県政を担当させていただく以前からずっと連綿としてやってきていることでありますけれども、例えば医療体制の整備でありますとか、検診率を上げようということなどをやってきたわけであります。事実として検診率でいけば全国平均を上回る検診率であることは事実であります。またがんの発見率も全国平均よりも高いということになります。さらに、鳥取大学附属病院がそのモニタリングをしているわけでありますが、5年生存率ということで見ても、全国平均と比べて極端に悪いということではなくて、項目によってはむしろ随分いいぐらいのデータになっているという状況にあります。ただ、がんで亡くなる方の率は高いということであります。結果が伴っていないのだと思います。最終的にはがんにかかって亡くなられる命を助けたいというところからがん対策はスタートしているわけでありますが、肝心のところがもう一つうまくいっていないわけであります。平成14年度を除けば、あとはずっと47都道府県の40番台でうろうろしているわけです。この状況は一向に改善されていないと言わざるを得ないのではないかと私は思えるわけであります。ですから、職員の皆さんにもこういう議論をするときにいつも申し上げるのですが、一体どうしてがん対策がうまくいっていないのであろうか、現実に死亡率が高いのはどうしてなのだろうかということを問うわけであります。そうしますと、このたびは大学関係者とかいろんな方と勉強会までやられまして、ひとつ論文も書こうかというぐらいに作業をされているわけでありますが、罹患率が高いのかなとか、ある程度の推測は出てくるわけでありますが、それでも原因はまだよくわからないわけであります。ただ、幾つかはっきりしている事実はあると思います。75歳未満で調整をしたがんの死亡率は、本県は総じて言えば高い。ですから医療体制の問題なのかどこか、原因を考えなければならないと思います。
今、県のほうでやっていることは専門医を養成しようとか、専門的な治療ができる体制にしよう、放射線治療や化学療法、こういうものが随分乏しいというか不十分な状況であったわけでありますが、これは今急速に改善し始めてきています。例えば県立中央病院とかでも、そうした専門外来をつくったりするようになってきております。また緩和ケア、これもかかりつけ医も連携してやるようなことをやっていこうとかいうことを始めているわけであります。緩和ケアのところもここ数年進歩は見られているとは思います。ただ、まだまだできていない、今急いでやっているのはクリティカルパスと言われる大病院とそのほかの病院も含めて、診療所も含めてケアの対策を共有できる、そういう仕組みをつくろうではないかと、とりあえず類似のものとして脳卒中について新年度からかかろうというところまで来ましたけれども、まだがんのところまで体制ができ切っていません。こうしたことを順次やっていくことは当然であろうと思います。あと、不可思議な状況にある、今まだ解明されていない原因を究明することを専門的に行うべきではないかと私は思っています。今の状況を申し上げれば、胃がんとか大腸がん、それから肝臓がん、こうしたところで全国的に見て低いレベル、死亡率の高いレベルが本県であります。ただ、他方で子宮がんとか乳がん、これは全国的に見て非常にうまくいっているレベルにあります。死亡率が低いレベルに来ています。そこらがどうしたことで、こうしたことになっているのかということを我々のほうで探求しなければならないと思います。肝臓がんであれば、これも不思議なことでありますけれども、西日本を中心として肝臓がんの死亡率が高い県が集中しているわけであります。これは地域性がひょっとしたらあるのかなと思える節もありますけれども、ただ、それとあわせていろいろな治療法もありますし、早期発見ということもありますので、対策を十分立てる必要があるのではないかと思います。
いずれにせよ、私は県議会の皆さんでも今議論が始まっているようでありますから、こうしたがん対策について原因究明を片方でしっかりとやりながら、それで効率がいい実効性の上がる、そういう施策を計画的に立てて実行に移していくことが必要だと思います。そのためには条例をつくるとか、あるいはもう一度その基本計画なりなんなりを、そうした条例的なスキームに基づいてやりかえていくとか、そうしたことを議論してもいい時期に来始めたのではないかなと思います。今までもいろんな対策を打ってきており、この議場でもたびたび議論しておりますが、もっと結果が出るように私たちは向上を目指していかなければならない段階ではないかと考えております。
◯議長(小谷茂君)中永教育長
◯教育長(中永廣樹君)上村議員の御質問にお答えを申し上げます。
質問ですけれども、福沢諭吉は知識を深める芸とともに、人間や人生を探求する道の重要性を言っていると、本県でも道徳としての道の教育は重点を置くべきものと考えるけれどもどうかというお尋ねでございます。
議員が御紹介になりましたように、福沢諭吉は芸の学問ということで、法律や医学などで仕事をしていく上で非常に役に立つ、そういうふうな学問が大事だということを言っていますけれども、一方で道の学問ということで、さっきお話がありましたように、哲学とか文学など人徳を磨くという学問も重要だというようなことを言っておられます。その福沢諭吉はそれと同時に、道の学問のほうが少し忘れ去られようとしている状況にあるというふうなことを言っておられます。時代は違いますけれども、この考え方は今にも通じるものがあるというふうに私は考えているところであります。
御紹介がありました福沢諭吉ですけれども、独立自尊という言葉がよく使われます。有名な言葉ですけれども、人は本当に自立をしないといけないということを考えて、いろんなことをそのもととして主張してこられました。我々県の教育委員会も、子供たちが最終的には社会の中で自立していくということが大事ですというふうなことを申し上げております。そのためには心豊かに社会の一員としての自覚を持ちながら生きていくということが大事だというふうなことを考えて我々は取り組んでいるところであります。そういう意味で、私は知・徳・体のバランスというのが非常に大事だということをずっと申し上げているところであります。
先ほどお話ししましたように、知が大事なことはわかりますけれども、情操とか道徳心をきちんと養うという意味での徳の部分が大事だということは、私も全く同感であります。そういう意味で、これも何度も申し上げていますけれども、私は学校教育における道徳教育というのが一番核になると思っています。これは、鳥取県は非常に力を入れています。学習指導要領に基づいて、小学校や中学校や特別支援学校ですけれども、非常に先生方が教材研究をして、授業の中で一生懸命取り組んでいらっしゃると私は思っているところであります。
それから、学校の道徳教育ももちろん大事ですけれども、このもとになるものが非常に大事だと思っています。つまり子供たちが生活の中できちんと自分たちの生活を正しくしていくといいますか、規則正しい生活をきちんとするというふうなことの中で正しい考え方とか行動を身につけますので、これが道徳などのもとになるというふうに私は考えているところであります。そういう意味で、心とからだいきいきキャンペーンというのは幅の広い大事な取り組みだというふうに我々としては考えています。ただ、これだけではいけませんのでスポーツを通じたりとか、それから読書を通じたり、それからさまざまな体験活動をしながら子供たちは徳になるもとをずっと養っていくのだろうと思って、これにも取り組んでおります。
また、高等学校は授業の中で道徳の授業はありません。学校生活全般の中でそれを学びますけれども、例えば具体的にはルールやマナーをしっかり若いうちに身につけなければいけないということで、JRの皆さん方とか、たくさんの皆さん方の協力を得て年に3回ぐらい、駅や列車内でルール、マナーをきちんとみんなで守ろうという運動をしています。これは1回目、2回目ぐらいのときは全県で3,500人くらいの県民の皆さん、本当にいろんな皆さん方が協力してくださって、生徒に声をかけてマナーをきちんと守ろうというふうな、そういう取り組みをしてもらっているところであります。私はこういうふうないろんな運動がもとになって、余り手前みそに言ってはいけませんけれども、近年、子供たちの様子を見ていまして、そういう公徳心とかこういうふうなものは改善されつつあるというふうに思っていますし、子供たちの体力も近年底を打って反転して改善している方向に今動いているというふうに把握をしているところであります。こういうふうなことをしっかりこの後も市町村教育委員会、学校と一緒になって家庭や地域の皆さん方の力をしっかり得ながら、議員お話の道としての道徳教育はもちろんですけれども、知・徳・体のバランスのとれた、それぞれを思い切り伸ばしていく、そういう教育に取り組んでいきたいというふうに考えておるところであります。
◯議長(小谷茂君)33番上村議員
◯33番(上村忠史君)答弁をいただきました。がんについては非常にわかりにくい部分が確かにあるようでございます。知事も条例ということをおっしゃいましたが、埴岡先生も条例を島根県でつくったということで効果があったということですが、その前に、県民の意識が、患者さん周辺とかその辺が上がってきたことが一番だったと、それが条例に結びついたというぐあいにおっしゃっておりました。
続いて追及の質問をさせていただきます。がん治療には、現在3種類ございまして、手術と放射線治療、あるいは化学療法でございます。それぞれに長所、短所があるわけでございますが、例えばがんが進行している場合には放射線治療が行われますが、放射線は波長が長くて近辺の成長細胞を傷つけたり回数が制限されたりということがあって、身体全体を弱める可能性が高いのであります。
そこで、ピンポイントでがん細胞を死滅させることができる高エネルギー加速器による治療、すなわち粒子線治療の提案をしたいと思います。
粒子線治療法とは、放射線療法の中でがんに対して粒子線を用いる治療の一つであり、がんに集中的に照射できることが特徴であります。従来のがんの放射線治療で行われますエックス線、ガンマ線、電子線は、体の表面で放射線量は最大であっても、人体内では減少していきます。これに対して、粒子線は体内に一定の深さまでしか進まず、しかもその到達点におきまして最大の効果が発揮できるのであります。そのことにより、周辺臓器等への影響をなくしながら、少量の放射能で大量の効果が期待できるのであります。
去る1月17日、茨城県東海村にある高エネルギー加速器研究機構の吉岡正和教授の「宇宙誕生の謎に挑む日本の貢献~クォークから宇宙へ」というお話を聞きました。難しそうな話で聴講の方は少ないと思っておりましたが、淀江のさなめホールがいっぱいでありました。吉岡氏は昭和21年6月に淀江町に生をうけ、京大理学部を卒業後、京大原子核研究所勤務をスタートに西ドイツ原子力研究センター、帰国後は高エネルギー物理学研究所を経て、現職であります。高エネルギー加速器建設の第一人者であり、小柴、益川、小林誠氏らのノーベル物理学賞受賞の基礎を支えてこられた人物と伺っており、日本の技術は世界一だというぐあいに自負されておりました。
そこで、現在粒子線を調整する加速器のない地方は北海道と中国地方、四国地方の3地区だけで、他の地区にはすべてあり、粒子線治療を行っているとのことでありました。鳥取県の近辺では、隣の兵庫県たつの市に兵庫県立粒子線医療センターがあり、粒子線治療を行っておられます。吉岡氏は事業仕分けで学術関係の予算を削減しないでほしいと訴えられるとともに、故郷であります鳥取大学医学部のある米子近辺に加速器を設置し、粒子線治療が可能な環境になってほしいと強く要望されておられました。また、同氏は米子市につくる場合にはおおよその事業費として130億円と試算されておりました。それとともに、がんと聞けばぜひ粒子線治療を思い出してほしいともおっしゃっておりました。莫大な経費を必要といたしますが、このことが実現しますと県民に高度なガン治療の環境を提供することができます。ぜひ関係機関と協議しながら県内への導入を検討すべきと考えますが、知事のお考えを伺います。
◯議長(小谷茂君)
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)がん治療について重ねてのお尋ねをいただきました。粒子線治療につきまして、これはまだ近在にないのではないか、鳥取県近辺には中国地方になくて設置費用もかかるかもしれないけれども、関係機関と共同しながら県内の導入を目指すべきではないかというお尋ねでございます。
この粒子線治療の実情につきまして、詳細は医療政策監のほうからお答えを申し上げたいと思いますが、吉岡先生の実際のお話も聞かれて大変に認識を深めていただいたこと、感謝を申し上げたいと思います。いろんな手だてを尽くして私たちはがん対策にアプローチをしていかなければならないのだと思います。その際に専門医の養成とか、それから化学療法だとかと並びまして放射線治療をどういうふうにやっていくか、放射線治療もその部位によって非常に有効になってくるわけでありますから、その有用性というのは我々高めていかなければならないと思います。
この粒子線治療についてでありますけれども、同じようないろんな放射線治療は鳥取大学でも今順次機器を整備をしてきました。このことはぜひ御認識をいただきたいと思います。かつてよりも確実に進歩してきていまして、そしてがんの治療センターを鳥取大学の中につくりましたので、カウンセリングだとか、そういったソフト面も含めて体制の充実が図られつつあると思います。現在、鳥取大学の中では定位放射線治療とか、それから強度変調放射線治療という先端医療機器を整備するに至っております。ですから、この議場でも議論がございましたけれども、多数の方向から照射をすることによりまして集中的にがんの部位に対して治療を施すという、そういう高度な機器も設置をされました。
そういう実情ではありますけれども、さらに新しい機器であります粒子線治療がいかがかということであります。これはまだ世界でも30例しか導入が進んでおりませんで、大変高価で先端性のある機器だと思います。ただ、問題は費用が非常にかかるということであります。ざっと見て100億円から150億円が1つの機器整備にかかるわけでありまして、標準的にも130億円内外というように言われるわけであります。よく高い治療機器なり診断機器として言われるPET-CTがございますけれども、このPETでも15億円強、17億円とか、15億円を上回るようなことでありますから、その10倍のオーダーでかかります。ですから、ではそれだけお金をこの放射線治療の器具に当ててしまっていいのだろうかと、それであったらむしろもっと人材育成とか、ほかのやるべきことがあるのではないかという議論もあろうかと思います。私は先ほど議論に上がってまいりましたけれども、ぜひこのがん対策を、この際再確立する必要があると思いますので、そういう中で大いにこういう高額医療機器の導入などの可能性も含めた議論はしていいと思います。今国内でも導入しているところの状況を後で医療政策監からもお話があると思いますが、例えば電力事業者が丸抱えでやるに近いような導入をしているとか、それから国が全面的にやっているとか、そういうところがかなりございまして、やはりどこも財源面では苦労をしているだろうと思います。
あと治療面でありますけれども、保険が今適用されない状況にありますので、1回こういう治療を受けることで大体300万円ぐらい受診料でお金がかかることになると言われています。ですから、高額な治療代がかかるわけでありますから、それだけの人を山陰といいますか、鳥取県内で集めてやれるだけのものになるのであろうか、100数十億円と言われるようなその費用を償還できるのであろうかというのはよく分析も必要ではないかと思います。現実問題は県内でもこれを活用している例はあります。鳥取県市内の病院で紹介をしまして、兵庫県の特に播磨地域なのですけれどもそちらのほうに設置をしているものでありますから、そちらを紹介して治療を受けているという例はあります。ただこうした粒子線治療はいろいろと効果も高いところがありますので、全面的に否定すべきものではなくて、むしろそれをどうやって利用できるような体制を広域的に考えていくかとか、それから今、既に設置をされたところでの治療などを活用させていただいて促進するような、そういうネットワークを県内でもつくっていくかとか、いろんな課題があるのではないかと思います。いずれにせよ非常に先端的な医療でありますし、示唆に富んだ御提案でありますので、これからがん対策を議論する中でこうした問題も含めた検討が必要ではないかと思います。
◯議長(小谷茂君)藤井医療政策監
◯医療政策監(藤井秀樹君)粒子線治療につきましての補足の答弁を申し上げたいと思います。
粒子線治療は放射線療法の一つでありまして、頭頸部がんや悪性黒色腫などに有効とされておりますが、すべてのがんを治癒させるような万能の治療ではございません。しかしながら、従来のガンマ線等を使った治療に比べ、放射線をがん病巣に集中させることができ、周囲の臓器への影響を減らし、十分な量の照射が可能となる治療でありまして、県内のがん患者さんが身近でこういうことを受けられるということは理想的なことであるというふうには考えております。
しかしながら、先ほど知事も答弁申し上げましたように、その整備に当たっては130億円から150億円とも言われる大きな費用がかかりますとともに最先端の治療でありまして、専門的な医師や技術者の確保が非常に難しい状況にもございます。
現在全国では、先ほど議員から御指摘のございました兵庫県の粒子線医療センターを含め7カ所に整備をされております。
千葉県にございます放射線医学総合研究所など、国が施策として整備をしているもののほか、電力関係等々の関連で整備されているところ等がございます。世界的に見ますとまだ30カ所しか整備されていない状況でございまして、日本は粒子線治療において最先端という状況でございます。また、治療自体が先進医療として保険診療との併用は認められておりますが、治療そのものが保険適用とはなっておりませんで、治療に当たっては約300万円もの患者負担が必要な状況であり、これも大きな課題であるというふうに認識をしております。
◯議長(小谷茂君)33番上村議員
◯33番(上村忠史君)わかりました。私も治療費のことは調べていなくて、大変失礼しましたけれど、そうは申しましても、今鹿児島県で進めているようでありますし、それから神奈川県でも新しくつくるというようなニュースも聞いております。たつの市の粒子線医療センターで治療を受けた方は、大変体に対する影響がなくて、膀胱がんでありましたが、それまでどおり仕事ができるということの手記も読ませていただきました。
私も鳥取県単独で130億円とか150億円とかいうようなことは難しい問題であろうかと思います。実は3~4年前に島根県でも有識者会議がございまして、そのときにも粒子線治療ということが出てきました。金属加工とかいろんな応用もあるようでありますけれども、究極の目的はがん治療だということで、やはり投資金額ということがネックになりまして保留になったようであります。ただ、鳥取県単独ということではなくて、国の制度とかいろんなこともあろうかと思いますし、島根県と協調してそういったことができないかというぐあいなことも考えますが、この点についてお尋ねをいたします。
また、教育長につきましては、大変頑張っておられるということはよくわかりました。県民を巻き込んで道徳教育に力を入れてこられたということであります。今、自民党の谷垣総裁は自助、共助、公助ということを言っております。そしてあわせてその3点ときずなということを一生懸命に言っておられます。鳥取県教育委員会におかれましても道、道徳の教育についてぜひ今後も取り組んでいただきたいと思います。
さて、去る2月7日、中永教育長がおやめになるとの新聞報道を見ました。私は中永教育長こそ知・徳・体のバランスのとれた人物であり、まだまだ教育長の職にとどまっていただき、本県教育の推進のために頑張っていただきたいと思っていただけに、報道どおり今期でおやめになるのは非常に残念であります。
振り返ってみますと、中永教育長は高等学校課指導係長として高校教育の改善に尽くされるとともに、定時制、通信制などの高校再編を果敢に計画、実行されてきました。その後、高等学校課長、教育次長を経て平成17年7月より教育長に就任されましたが、教育長になられてからは、全国学力・学習状況調査の公開を全国に先駆けて実施されるとともに、その結果を生かすために市町村と連携した子供たちの学力向上策に取りかかられました。また早寝早起き朝ごはんなど、子供たちの望ましい基本的な生活習慣を訴える、先ほども話が出ました心とからだいきいきキャンペーンを展開するとともに、高校生のあいさつ運動、学校における朝読書の奨励、スポーツの強化などにも力を入れる一方、ブラジルでの国語教育など、多方面に精力的に活躍されてこられました。さらに平成20年度には鳥取県教育振興基本計画を策定され、本県教育の指針を県民の皆さんに示されるとともに、学校現場に積極的に足を運ばれ、生徒や保護者、教員との話し合いを行われ、教育環境の改善に御尽力されたと伺っております。
先ほど申し上げましたが、知・徳・体のバランスのとれた教育はまさに私の考える理想的な教育であり、その理念が一致する中永教育長が本当におやめになるならば非常に残念であります。昨今は教育に対するニーズや課題が増大するなど、非常に厳しい環境にありながら、中永教育長におかれましては任期中、本当に鳥取県の教育のために粉骨砕身努力されるとともに、誠実に職務に当たられ、我が県の教育行政の進展に寄与されましたこと、県議会議員の一人として心から感謝を申し上げる次第であります。先ほど申し上げました道とは、人間や人生を探求するものであり、中永教育長におかれましても、本県教育の道を模索し続けられた4年間ではなかったかと拝察をいたします。
そこで、今月の任期満了までにまだ3週間ほど残っておりますが、教育長としての4年間を振り返りどのような4年間であったか、感想を伺います。
また教育は勤労、納税とともに国民の三大義務であります。国や県の未来をつくっていく非常に大事なことであります。その大切な教育行政の県のトップとして4年以上も教育長をお務めになったのでありますので、ここはぜひとも今後の鳥取県の教育に対する中永教育長の熱い思いをお聞きしたいと思います。
以上2点を伺いまして、私の
一般質問を終わらせていただきます。
◯議長(小谷茂君)
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)がん対策について重ねてのお尋ねをいただきました。粒子線治療の有効性を説かれ、そして島根県との連携した設置なども考えられないかというお尋ねでございました。
これにつきましては先ほども申し上げたとおりでありますけれども、がん対策をこの際もう一度原因もよく究明して、何に対する対策が75歳未満の調整がん死亡率というものを引き下げる効果があるかというのを考えていかなければいけないと思います。それに沿って処方せんもいわばみんなで考えて、有効と思われる施策を効率的に執行していくことが大事であると思います。
今、御指摘いただきました粒子線治療の問題もそのうちの一つになろうかと思います。県では現在、県がん診療連携拠点病院というものを鳥取大学附属病院に設けまして、さらに二次医療圏ごとに地域がん診療連携拠点病院を形成をさせていただいております。それらが分担をしまして専門医を育成をするとか研修会をやるとか、また率先して放射線治療の機器整備を行うとかいうようなことをやっています。県の中央病院でもリニアックなどの整備などを進めてきているわけでありますが、そうしてコアとなる病院群をつくり、そしてさらにそのスキルを他の病院にも分けるような、そういう研修事業などもやる。正直申し上げて鳥取県内だけでは人材育成は無理でありますので、がんセンターとか、そうした非常に技術の高いところに研修に医者を派遣しまして、それでその技術を習得する機会を設けるとか、そういうような総合的な取り組みをやっていかなければならないと思います。特にその治療機器の問題も重要なことであることは論をまたないと思います。
今おっしゃった粒子線治療につきましては、130億円とか150億円とか非常に高いものであることは、それは事実であります。ですからその機器のこれからの製造状況とか周辺における整備状況だとかそういうものを見たり、専門人材の育成可能性なども判断しながら、今後検討していくことになろうかと思いますが、広域的に整備をしようというのは私は一つのアイデアではないかと思います。今あるたつの市の施設を広域的な活用として我々も利用しやすいように県でもやっていくことも一つの手かもしれません。また、島根県でかつて専門家が検討されたことがあるというお話でございました。私も、そうであれば島根県とも一度この問題について協議してみてもいいのかなと思います。島根県と2県だけではまだ不足するのであれば、例えば岡山県とか広島県だとか、そうした近隣の県とも連携してやっていくことも重要だろうと思います。現実のことで言えば、東北地方であれば今福島だけにあるわけでありまして、これも多分背景には原子力発電所の立地だとか、そういうことがあるのかもしれません。福井県も原子力発電所が所在しているすぐ近くのところにこの施設を持っているわけでありまして、これは国の原発の交付金で整備をしているわけであります。そういうような幸いにして整備をなされたところ、そこでは恐らく300万円の治療費でありますので、自分の県だけで全部集めることは毛頭考えていないでしょうから、そうした施設を広域的に活用することも検討されていいのだろうと思います。近隣の地域とも連携を図りながら、特に島根県は専門的な検討もされたということでありますので、島根県ともぜひ協議をさせていただきまして、今世界の先端医療として走り始めました粒子線治療を活用する可能性について、鳥取県としても考えをまとめていきたいと思います。
◯議長(小谷茂君)中永教育長
◯教育長(中永廣樹君)上村議員から御質問いただきました、教育長としての任期を振り返ってその感想と、今後の鳥取県教育への思いをというお尋ねでございます。
先ほど過分なお言葉をいただきました。身に余るお言葉をいただきました。非常に恐縮しております。本当にありがとうございました。
最初に教育長としての4年間の感想ということでありますけれども、私は現場にもしおりましたらちょうど60歳になりますので、定年になる年であります。ちょうどそのときに教育長を退任させていただくというようなことになりました。私は教員の生活が20年間であります。それから教育行政が通算ですけれども15年間ということでありまして、力はありませんでしたけれども、私はこうやって教育行政に携わらせていただいて、本当に教育に熱い思いを持っていらっしゃる議会の皆さん方、知事を初めとする執行部の皆さん方、教育関係者の皆さん方とたくさんの議論をさせていただいて、そして支援をいただいて務めさせていただいたということは、本当に感謝しても余りがあるというふうに私は思っています。本当にありがとうございました。
いろんなことを今思い出しますけれども、いろんな議論をさせていただいたなと思っています。これは私どもの答弁も十分でなかったりしたこともたくさんあるので反省もあるのですけれども、ただ、全国学力調査の問題ですとか少人数学級の問題ですとか専攻科の問題ですとか、いっぱい議論をさせていただいたのは、私にとってはとても大きな宝物であります。あわせて、学校にいたら多分お会いできなかったたくさんの県民の方とお会いできたということも私のとても大事な宝だというふうに思っています。
私は努力したことが幾つかありますけれども、先ほども御紹介いただきましたけれども、ちょっと簡単に申し上げますと、1つは、私はやはり教育行政を開かれたもの、透明性の高いものにしなければいけないという、この基本的な考え方を一番大事に思ってきたつもりであります。これは県政の大方針であります。そういう意味で、学校を開くために学校評価の制度を取り入れました。それから教職員の皆さん方の力を伸ばしていただいたり、開かれた教育というようなことで教職員の評価制度も取り入れさせていただいたところであります。それから人事異動などの新しい制度も取り込んでくることが少しできたと思っています。あわせて教員採用システムを透明化するとか、それから給与や手当の見直しなどもかなり積極的に皆さんと一緒になってやらせていただいたというふうに思っているところであります。それから、その中でもさっき申しました学力・学習状況調査の開示ですけれども、これは、私は一番大きな思い出があります。これはさっき言いましたように、開いていくためだけではありませんで、教育はみんなのものであります。教育はみんなの力が合わさって、初めて本当の教育になると思っています。そういう意味で、結果を開示して情報を共有して、県民みんなで学校を支えてくださったり、見守ってくださったり、先生方をしっかり支えてくださったりとか、そういうふうなことができるものという思いがあって私はこれを開示しました。条例も改正させていただいて、30数件開示をいたしました。けれども、心配していました過度な競争や序列化は起こりませんでしたというふうに私は把握しております。そういう意味で、ぜひこれを生かして、これからも鳥取県の教育がいいぐあいに進んでいくように、ぜひぜひ皆さんのお力をいただきたいなというふうに思っているところが1つであります。
2つ目は、現場主義を私は大事にしたつもりであります。県立学校には全部の学校に私は必ず毎年行きました。そしてたくさんの授業を拝見いたしましたし、教職員の皆さん方とできるだけ話をするようにしました。学校だけではなくて教育機関にも出かけていきまして、職員の皆さんとたくさんの話をさせていただきました。私はそれは行政にしっかり還元させていただいたというふうに思っています。先般は倉吉農業高校の生徒たち70人ぐらいと、夜でしたけれども御飯を食べた後、教育問題についていろんなことを話をしました。子供たちの思いもいろんな深い思いがあって、それを受けとめることが少しは自分としてはできているのかなというふうに思っているところであります。そういうところがありました。あとほかに、学力はまだまだこれから伸ばさなければなりませんけれども、基礎をつくるための生活をきちんとすることを努力しましたし、それから読書とか道徳の充実も私なりに努力をしてきたつもりであります。
今後の鳥取県の教育に対する思いというのが2点目ですけれども、これは総論的なことになりますけれども、教育も子育ても、私はとても時間がかかるものだというふうに思っています。手を抜いてはいけない、一つずつ丁寧に丁寧に時間をかけてやるのが子育てであり、教育だというふうに思っています。効率だけを目指して、あるいは大人の都合だけでやっていっては絶対いけないというふうに私は基本的に思っているところであります。そういう意味で、ぜひ鳥取県の教育がうまくいきまして、坂本龍馬ではないですけれども、明治の人たちのように志の高い人たちが国や地域をしっかり支えていくような、そういうふうな教育がぜひできるように鳥取県の教育が進んでいったらいいなというふうに思っています。
もう一つ、私は教員でしたので、教員の側のことも考えます。割と学校を守ったような感じに受け取られるところがあったかもしれないなと思って反省はしているのですけれども、教育は人なりというふうに申します。教育はどんなにハード的な整備をしても、最後は中で教育を行う人の力にまつところが極めて大きいと思っています。そういう意味で、教育は人なりと思っています。ぜひ先生方は資質を高めていただいて、鳥取県の子供たちをしっかり伸ばしていくような、そういうふうな力をぜひぜひつけていただきたいと思いますし、我々も努力していかなければいけないというふうに思っています。あわせて先生方も、この間、浜田議員さんの御質問の答弁で申し上げましたこととちょっと重なりますけれども、学校ではいろんな問題がありますけれども、ぜひ先生方は矜持を持って、信念を持って、元気に教育をやっていただきたいなというふうに思っているところであります。子供は大きな力を持っていますから、必ずいい教育がなされれば物すごく大きな力を子供たちは発揮してくれるというふうに思っています。ぜひ県民みんなで子供たちをしっかり手をかけながら、時間をかけながら大事に、しかし時には遠慮もしないで、譲り過ぎないで、心配もし過ぎないようにダイナミックな教育がなされることを私はこれからの教育に対する思いとして持っておりますので、ちょっと何か偉そうなことを申しましたけれども、申し上げさせていただきました。どうもありがとうございます。
◯議長(小谷茂君)暫時休憩いたします。
午後の本会議は、午後1時より再開いたします。
午前11時47分休憩
────────────────
午後1時00分再開
◯副議長(斉木正一君)再開いたします。
引き続き、
一般質問並びに議案に対する質疑を行っていただきます。
9番福本竜平議員
◯9番(福本竜平君)(登壇、拍手)県議会自由民主党の福本竜平です。外国人地方参政権問題について、さらさらと質問させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
民主党政権の誕生により、外国人地方参政権問題がにわかにクローズアップされてきました。民主党小沢幹事長は、昨年韓国を訪問した際のソウル市内での講演で、永住外国人に地方参政権を付与する法案について、本年の通常国会での成立の見通しを示したそうであります。民主党は結党時の政策として外国人地方参政権の付与を掲げ、政策集INDEXにも取り上げていますが、さきの衆議院選挙のマニフェストからはその項目を見ることはできませんでした。なぜこのような国論を二分する問題をマニフェストに盛り込まなかったのか、そこには保守票の離散を危惧したための選挙対策への腐心がうかがわれます。民主党が政権党としての自覚を持つならば、来るこの夏の参議院選挙で堂々と党のマニフェストとしてこの問題の是非を国民に問うべきと考えます。ちなみに、我が自由民主党におきましては、先ごろ開催された党大会において、拙速な定住外国人への地方参政権付与法案の提出に断固反対する基本方針をあらわしたことを、この場をおかりして県民の皆様にお知らせいたします。
さて、
平井知事におかれましては、本年1月の定例会見で外国人地方参政権の是非を問う記者の質問に対し理解できると発言され、外国人への地方参政権の付与に肯定的な見解を示されました。会見でも述べておられますが、その背景には、本県においてはこの議場で、平成6年に国に提出された定住外国人の地方参政権の確立を求める意見書が根底にあり、以来、本県としては外国人地方参政権付与に肯定的なスタンスをとっているとするこの問題への県知事としてのその基本姿勢の根拠には一定の理解はできるところであります。しかし、平成6年当時、この問題への憲法学説の多くが禁止説をとる中、国や地方での十分な政策議論や憲法上の法律解釈の検討がなされぬまま、本議場においてもいわば軽々に参政権付与を求める意見書が提出された感は否めず、当時のこの問題の本質性の国民、県民の十分な理解と、それを導く議論の不在には大きな失望を抱くとともに、政策上も大いなる疑義を覚えざるを得ません。また、昨年の政権交代以降、全国14の県議会で永住外国人の地方参政権法制化に反対する意見書は可決されており、さらにそのうちの7県は、かつて賛成の意見書を可決している県議会であること、また本日現在さらに全国18の県議会で反対もしくは慎重を求める意見書の可決を準備する動きがあることは、地方議会が冷静さを取り戻す中で世間も当時の意見書と反対の世論に傾いているあかしであり、このことからも15年も前の意見書に呪縛され続けることは、現在の国民、県民世論の状況にかんがみてもいかがなものかと思われます。いずれにしても、今日、再び外国人地方参政権問題がクローズアップされた機会に、この問題の本質を県民の皆様に明らかにする中で政策上の是非を問い、正しい法律解釈に基づく憲法議論をなす必要を強く感じる次第であります。
そこで、知事におかれましては、そもそも政策論的に外国人に地方参政権を与えることにつき、鳥取県知事としていかなるお考えをお持ちかお聞かせください。
また、平成7年2月の最高裁判決以来、憲法学説的にはそれまでこの問題における通説であった禁止説から、部分的許容設を通説とする学説が浮揚してきましたが、知事は憲法論的に外国人に地方参政権を付与することへの法解釈をどのようにとらえておられるのか、鳥取県知事としてのお考えを県民にお示しください。
なお、平成7年2月の判例が示すように、この問題は基本的に国の立法政策上の問題ではありますが、去る1月21日全国議長会においても地方の重大な問題であることから、地方の意見を十分に尊重するように政府に求めたことからも、地方の県知事としてもこの問題への基本的立場を県民に明らかにする必要があるとの考えから、あえてここに質問いたしますことをお断りいたします。とりあえず以上。
◯副議長(斉木正一君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)福本議員の御質問にお答え申し上げます。
福本議員から外国人地方参政権の問題につきましてるる御説明があり、御質問をいただいたところであります。今、この議論が非常に集中的に起こるようになっているわけでありますけれども、このことにつきまして小職、私のほうから記者会見の場において発言したことについて、県の姿勢を明らかにする立場から政策論的な考えを示すべきだと、また、憲法学的にどういうような状況なのか考え方を問うというお話をいただきました。
この外国人地方参政権問題でありますけれども、これについてはこの議場で幾度となく議論がなされ、議決がなされてきました。その経緯だけをざっと申し上げれば、平成6年に地方参政権を外国人に付与することにつきまして推進の決議がなされています。これは全国的にも早いタイミングで当時の議員の皆様が議決をされたと伺っています。その後、平成10年、平成11年と、そうした推進の決議をもう一度見直そうという、そういう意見書等が出されていますが、これは否決をされております。さらに平成15年にはもう一度推進をするという確認の請願、陳情がございまして、趣旨採択ということになってきました。その後、議論は随分移り変わってきております。なかんずく政権交代もありまして、この外国人地方参政権問題をどういうように国全体として考えるか、今まさに議論の俎上に上ってきたと言っていいと思います。
いろいろと問題状況も区々に分かれているわけでありますが、議員のほうからぜひ議論を整理をして、この場で議論をすべきだということで御質問いただいたものだと思いました。私はそうして多くの場でこの問題を議論することは大いに結構だと思いますし、できればこの地方議会の場だけではなくて、国全体で国民の皆様にも関心を持っていただいて結論を考える、そういうことは当然あっていいと思います。
このことにつきまして、私が記者会見で発言したことをとらえての御質問がまず第1点あったわけでありますけれども、記者会見の言葉をもう一度確かめていただければよろしいかと思いますが、これは一義的に立法裁量の問題であると、立法政策によって国会が考えるべき国の基本にかかわる問題であるので、よく議論してほしいというのが最終的な私の物言いの考え方でございました。これは確かめていただければ結構かと思います。それに向けて当県の状況を若干御説明申し上げたりいたしたわけであります。私なりに政策論的なこと、憲法論的なことを私の理解の範囲内で申し上げれば、憲法の各条文にかかわるところであります。当然ながら基本的人権は国内に住んでおられる方すべてにかかわるものであります。日本国籍を持っている人以外の方にも基本的人権は及ぶというのが最高裁の大法廷の確立した判例であります。ただ、その最高裁の判例の中でもそれについては日本国民に限定されるものと、保障は日本国民以外にも基本的に及ぶものと、それはそれぞれの自由権なり人権に則して考えるべき課題であると、こういうように整理をされているわけであります。
今回の議論の発端となりましたのは、平成7年2月28日の最高裁の判決があったわけであります。そこで出てきた判決が非常にメッセージ性の強いものでありまして、これをどういうふうに考えるか、これに対してどういうふうに対応するかということが国全体で求められることになったのだろうと思うのです。そもそもこの判決の中でも触れられていますけれども、通説的な理解を申し上げれば、憲法の中にはまず前文で、主権は日本国民に存するということがはっきり書いてあります。また前文には法律的な効果はないかもしれませんけれども、あわせて憲法の第1条で天皇の象徴としての地位につきまして、主権の存する国民の総意に基づくものだと、こういうふうに言っているわけであります。主権の存する国民と言っておりまして、国民主権をもこの条文は規定したものだと一般的には理解をされているわけであります。さらに、憲法第15条の中に公務員の選定罷免権というものが記されています。この選定罷免権は日本国民が持つ権利として、公務員の選定、罷免を行うことができるというふうに規定をいたしております。さらに憲法の43条におきまして、衆議院、参議院の両議院の議員につきまして、これは日本国民を代表する両議院議員だというように書いてありまして、日本国民を代表するという言葉が使ってあります。さらにその選出方法につきましては法律で規定するというように書いてあります。国会議員のところは明らかに条文上も多分だれが読んでも日本国民が選挙をすると。それを代表するのが両議院の議員であるというように読めるわけでありまして、これはその背景にあります国のあり方を左右する方針を決定をする法律を定め、予算を定め、あるいは条約を批准、承認するという、そういう国会のステータス、これは国権の最高機関でありますので、これに対して国民は直接選挙をするということは主権在民、国民主権の原理からしても当然のことだというように理解をされているわけであります。
これとまた分かれたところで条文上第8章が規定され、
地方自治が戦後、鮮明に記述されるに至ったわけであります。その92条におきましては、
地方自治の本旨にのっとり地方制度につきましては法律で定めるというようになっています。法律で定める中で
地方自治の制度というものはでき上がるということが規定をされているわけであります。さらに憲法の第93条におきまして、この規定では住民が代表である首長だとか議員を選挙をするというふうに書いてあります。ここに住民という表現が登場するのです。この第8章の
地方自治の章では地域における特別投票も含めて住民という言葉を使っています。この辺が憲法の字面の上でははっきりしないところだというところがあったわけであります。それで、平成7年の最高裁の判決でございますけれども、この判決の中で登場いたしましたのは、まず主権在民、国民主権ということから考え、また憲法の15条ということから考えて、憲法93条における住民というのは、日本国籍を持った日本国民である住民に対して保障が及ぶものであるというように解釈をしております。これはそれまでの通説的な学説上も言われていたような理解と変わるものではないわけであります。
ただ、その判決の次に傍論として書かれおりますのは、永住権を持っているなど、その地域と密接なかかわりを持つ人、特に密接なかかわりを持つ人についてその選挙にかかわっていく、代表を選ぶ選挙にかかわっていくことを法律上規定したとしても、それは違憲とは言えないと、立法裁量であると、これは専ら国の立法政策に基づくものであると。今の状態についてはそれが規定されていないからといって違憲とは言えないと。これは立法政策なので、その立法政策に基づいて規定を置いていないことについては違憲とは言えないと、こういうよう判示をしているわけであります。
この後、非常にこの外国人の地方参政権問題、議論が強まります。そして国全体でも、例えば当時の連立与党などで政策合意がなされるとか、さまざまな動きが出てくるようになりました。ただ、今日に至るまで、このことは立法化されていないというのが現状だということであります。
この問題を考える上では、まずはその憲法論が当然あります。その憲法論の背景にある国家像というものの考え方が当然ながら大きな問題としてあると思います。憲法は主権在民を言っているわけでありますから、基本的には国の政治を決めるのは日本国民が行うというのは当然のことであります。さらにその権力に由来をするとされています
地方自治政府であります自治体においても、そうしたことは基本線としては妥当するということだと思います。
ただ、この平成7年の判決で大変な衝撃を与えましたのは、それまでとは違ったメッセージを出したからであります。その新しい考え方というのは、特に地域と密接な関係を持つに至った永住権等を持つ人たち、こういう人たちについては地方参政権を認める立法行為が許容されるということを憲法の解釈として述べたことであります。これは今までの考え方に加えて全く違った領域を出したことで、ある意味時代を画するものだったと思います。正直に素直に考えてみれば、例えば町内会を考えていただければいいかと思います。町内会を成り立たせるために町内会費を住んでいる人からもらいます。それは恐らく国籍のいかんを問わず町内会費を集める。その町内会費を集めて、それをではどういうふうに使っていろいろみんなで地元のこと、いろんなことをやっていこうかということを決める、そういう場において議論に参加していただくのは当然ながら会費を払った町内会の人間であるということだろうと思うのです。
こういうようなことのアナロジーとして、地方参政権については国政の決定云々とは切り離して語り得る余地は理論的にはあり得るのであろうと思います。現実問題、世界を見渡してみますと、例えばEUの国においてはEUの領域内で相互に地方参政権を認め合うということは結構幅広く行われているところであります。また、韓国においても地方参政権を認めるそういう法制がなされていたりします。
こういうように、世界は少しずつ変わってきております。結局コスモポリタンといいますか、国同士の国境線がとれてきているという社会的な実情もありまして、こういう外国人の皆さんが特に地方レベルで政治に参加することについては、最高裁が平成7年の判決で言いましたように、それまでは当然否定されても当たり前だと思われたことでありますけれども、立法政策の範囲内だというように解釈をされるに至ったことは重く受けとめなければならないのだと思います。
この問題は以上のような背景や理論的なアプローチがあるのだと思いますが、私はこの解決自体は、幅広い国民の議論のコンセンサスの上になされなければならないことだろうと思います。その幅広いコンセンサスを得る議論をこの日本という国の中でも当然ながらやるべきだと思います。その意味で、大いに議論をしていただければよろしいかなと思います。本議会でもそういう問題意識から、古くからこの地方参政権問題に対してメッセージを全国に発する決議を行ってきたのだと理解をいたしております。
◯副議長(斉木正一君)9番福本議員
◯9番(福本竜平君)御答弁ありがとうございます。追及質問に入ります前に、先ほど来ございました、本県でも平成6年に意見書が採択されております。このことを踏まえまして私なりに整理をしたく思います。
まず、平成6年以降、全国の地方議会で外国人参政権付与を求める意見書が確かに多数可決されております。これがどうも平成10年代の初頭ぐらいまであったでしょうか。ちょっと私なりに、その当時の時代背景等を考えてみました。まず平成5年に自民党が戦後初めて下野します、野党に転落いたしました。そして自民党が自社さ連立政権というものを平成6年に組むわけですが、どうしてもやはりこのときに与党復帰を図る余り、理念の異なる旧社会党と連立を組んでしまった、こういったことも一つに上げられると思います。そして平成10年にはいわゆる自自公連立、先ほどちょっと知事も申しておられましたが、自自公連立です。このときに旧自由党は今の小沢幹事長ですが、小沢幹事長の強引な導きがあったとはいえ、永住外国人の参政権付与の連立合意を行ってしまったという、こういうところを我々は今の自民党としてこの過ちを深く反省するものであります。
確かに平成6年に可決されておりますが、以上のような整理をつけた上で、自民党の私としては深い反省のもとに質問をさせていただきます。なお、現政権もそうでありますが、時の自民党政権も、理念の異なる政党と政権欲しさのために国を運営するといかに誤った方向に行くか、他山の石としたいと思っております。
まず、外国人参政権の問題に入らせていただきますが、これはそもそも国政参政権なのか地方参政権なのか、そして選挙権なのか被選挙権なのか、地方参政権のうちでも首長選挙も認めるのか議員の選挙だけにするのかという議論があろうと思います。そして憲法論のほうですが、これは大きく禁止説、許容説、要請説とありますが、要請説におかれては、アラン争訟で既に要請説は否定されておるわけですから、この場では議論しようとは思いません。治者と被治者の受動性ですとか、自然権に含まれるとか、国民概念を広くとらえるとか、それぞれに反証はできますが、この場では差し控えたいと思います。
問題をめぐる憲法上の議論ですが、平成7年の判決をどう解釈するかという点に帰結するのだと思います。この判決の解釈の前に、この判決それ自体へのさまざまな疑問が投げかけられております。要するに、先ほど知事も申されましたが、これが出るまでは学説上も判例上も国政参政権、地方参政権、また選挙権、被選挙権を問わず、いわゆる全面的な禁止説が通説でありました。ところが平成7年のこの判決は、当時の一般的な学説を覆す異例の判断を下したわけです。選挙権が国民主権原理に基づいて、権利の性質上、日本国民のみを対象とし、外国人は及ばないと言いました。
地方自治について定める憲法93条2項の住民とは日本国民を意味し、我が国に在留する外国人に対し、
地方公共団体の長、そしてその議会の議員等の選挙の権利を保障したということはできないとする一方で、我が国に在留する外国人のうちでも永住者であって、その居住する
地方公共団体と特段に密接な関係を持つに至ったと見られる者については、法律をもって
地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは憲法上禁止されていないと、いわゆる国政への参政権は禁止しつつも、地方参政権については特別な永住者に限っては立法措置を講じて参政権を与えても違憲ではないとする部分的許容説にのっとった判例でありました。
この判決以降、憲法学説の通説は一気に部分的許容説に流れますが、この点、この部分的許容説を日本に紹介された中央大学の長尾教授からは以下のような指摘がされております。この地方選挙についての学説の急激な変化に対し、80年代において疑う余地のない自明の理とされていた旧説、禁止説による正面からの理論的抵抗はほとんどなかった。この通説変更の際における論争の不在は特異な現象と見る必要がある、この特異な短期間での学説の一変に警鐘を鳴らしておられます。さらにイザヤ・ベンダサンは日本の思想風土を隣り百姓であると。要するに何でも一斉にやるのが特徴だとしております。これは要するに当時EUの加盟で、ヨーロッパでどんどんこの地方参政権の法律が付与されていったと、これに横並びに我が国も並んだということを言っておられます。学説判例のあり方も、この横並び一線主義は歓迎すべきではないと考えます。
また、同じく地方参政権を部分的許容説で認めるドイツとの比較において、長尾先生は次のように分析されておられます。ドイツにおいて許容説が登場したのは、移民化した外国人を政治的に統合する必要が生じたこと、国家統合を目指すECにおいて地方選挙権の相互保障の動きが高まったことに伴うものであって、必ずしも理論的必然性によるものではなかったと。いずれにしても、ドイツにおいても憲法改正の後にEU市民に地方参政権を保障したにすぎず、その他の一般外国人には今なお禁止説が支配的だと。国民主権を基本原理とする日本でも理論上大差ないにもかかわらず、我が国では論争不在で学説が変動したことは問題であると。
さらに、この判決の疑問として次のことも挙げておられます。最高裁は議員選挙、そして首長の選挙双方に、特に傍論を付してまで許容説の立場を示す必要があったのか疑問だと。第1に、外国人の地方選挙をめぐり、学説状況がまだ流動的であった当時、許容説においても議員選挙はともかく、首長選挙については支持する者は少数であった。第2に、外国人の参政権問題は重大な政治的問題であり、各党はそれぞれの計算や思惑を秘めてこの問題に対応しているにもかかわらず、この最高裁の傍論は微妙な政治状態に決定的な影響を与えてしまった。要するにこの判決には司法機関としての限度を超えるものがあったのではなかろうかと述べておられます。私も実は東京で禁止説の日本大学法学部の百地先生にこの点を伺いました。そうしたら百地先生も、最高裁も時には誤るのですとおっしゃいました。非常に印象的でした。
いずれにしても、この判決が出されて以来、部分的許容説が現在の通説とされていることは疑いがありません。よって具体的に、ではこの平成7年の判決の解釈について議論したいと思います。
判決では国民主権の原理から外国人参政権は保障されたものではないが、居住する地域の
地方公共団体と特段に密接な関係を持つに至った永住者に立法措置して地方参政権を与えることは憲法上禁止されたものではないとしております。では、この判決から本当に直接的に永住外国人への地方参政権付与が果たして導き出せるのでしょうか。まず、この判決は本論と傍論で矛盾が隠せないという議論もあります。また、仮に矛盾がないとしても立法政策上、特段に密接な関係を持つに至った永住外国人に地方参政権を付与しても構わないというその論拠が判決の中で示されておりません。そのために、地方参政権付与の説得力に著しく欠けることは否めない事実であると考えます。
次に、この判決にかかわった園部元判事によるこの判決の法令解釈、これは自治体法務研究2007年の夏号からの引用で解釈を試みたいと思います。この判決は3つに分けて、第1が、憲法93条が在留外国人に選挙権を保障したものではないこと。第2は、永住者の中でも特に居住する地域の区域の
地方公共団体と密接な関係を持つに至った者に対して選挙権を付与する措置を講ずることは憲法上禁止されていないが、それは国の立法措置政策にかかわる事項で、措置を講じないからといって違憲ではないとしている。第3に、選挙権を日本国民たる住民に限るとした
地方自治法公職選挙法は違憲ではないとしているところというこの3つに分けております。その上で、ここが重要です。判例は第3の部分であり、第1、第2は判例の先例法理を導くための理由づけにすぎず、先例法理ではない。また、第1を先例法理としたり、第2を傍論、または少数意見としたり、あるいは第2を重視したりするのは主観的な批評にすぎず、判例の評価という点では法の世界から離れた俗論であると記述しておられます。
このことからも、この判決の判例としての得べかりし評価は選挙権を日本国民たる住民に限るとした部分のみであり、永住外国人への地方参政権付与の根拠とされる第2の部分は傍論でも少数の意見でもないとともに、この部分を重視することは判例の評価からは何ら意味がないことが示されていることになります。よって、この判例から直接的に外国人地方参政権付与の根拠を導くことは無理があると考えますが、知事の所見を問います。
また、この傍論と言われる第2の部分の導入を強く求めた園部判事は、これを入れたことに関し在日韓国朝鮮人をなだめる意味があった、政治的配慮があったと明言されております。さらに地方参政権付与の対象者は在日ら非常に限られた永住者に限定したとして、特別永住者であっても転居など地域と密接な関係を失った場合は選挙権を認められないとの考えを示し、本判決が在日韓国人の状況にかんがみた特別永住者にのみ認められるものであること、仮に認められるとしても外国人の地方参政権の付与は地域との密接な関係の有無が問われるとの非常に制約的な権利許容の範囲内のものでありました。
この点、本判決にも大きな影響を与えたとされる先ほどの中央大学の長尾教授は、次のような理由を挙げてみずからの部分的許容説の誤りを認めて、禁止説へ変遷したことを反省を込めて次のように語っておられます。韓国が平成21年に在外選挙権法案を成立させ、在日韓国人の本国での選挙権が保障されたことで、立法事実の一つが崩れたことから、現実の経験的要素が法解釈に影響を与える立法事実の原則からも、特に在日韓国人の状況を根拠にして部分的許容説の法的論理性を維持することはもはや困難である。ほとほとこのように、今日的には部分的許容説は憲法学説としては支持を失い始めていると言えます。また、参政権付与は在日を想定したとする園部元判事も、当時の判決について金科玉条で一切動かせないとは考えていないと述べ、時代の変化に合わせて見直すことも可能との考えを示したと報じられました。
これらのことからも、平成7年の判決から直接的に在日韓国人等一部の特別永住者に限って永住外国人に参政権が認められると解釈することは、少なくとも判決から15年経過し、大きく変化した在日韓国人を取り巻く環境の変化に照らしても困難であると考えますが、知事の御所見を伺います。とりあえずここまで。
◯副議長(斉木正一君)答弁を求めます。
平井知事
◯知事(平井伸治君)(登壇)福本議員からさらに精細に外国人地方参政権につきまして、特に平成7年の判決の解釈、あるいはその後の変遷を取り上げられて、永住外国人に参政権は認めれるふうに平成7年の判決から導き出されるということは言えないのではないかというお尋ねをいただきました。
これについての問題状況ですね、今議員のほうから御指摘いただきましたいろんな分析は、ある程度妥当するものはあるのかなというように私も思うところであります。ただ、幾つか私なりにもいろいろと考えさせていただきますと、また別のアプローチもあるのかなと思うようなところもないわけではありません。今回の、平成7年の判決は、ではどういう判決だったのか、全く意味のない判決なのかどうかということであります。まず、判決の効力でありますが、これは講学上のことではありますけれども、判決の効力自体は主文の基本的な部分が判決の主たる効力を持つものであります。それに対する理由づけのところは、その判決に付随するものとして大きな効力を持ち得るものであります。これとはまた別のところで傍論として書かれるものもあります。一般にはこの傍論部分というものは判例としての先例的価値は、この主文にかかわるような論旨と比べますと薄いというように言われています。これは事実であると思います。そういう意味では、議員がおっしゃるように、今回、平成7年の判決は判例的には全く意味のないものだというような御主張があることも理解できないわけではないと思います。ただ、大切なのは、私自身もあの判決を当時読んでみてびっくりしたわけでありますが、みんながびっくりするような判決だったわけであります。まず、みんながみんな憲法を習う過程では日本国民が選挙権を持つのだと、それは主権在民という言葉の裏返しとして理解をしていました。ですから確かに93条あたりで住民の代表として、住民という言葉を使って議員や首長というようなことが記述をされていたりするわけでありますが、それも当然ながら選挙権がある人でなければいけませんので、日本国籍を有する人だというのが通説的な理解であり、常識的にはそう考えるのかなと思っていました。実はこの判決以前にも、先ほどアラン訴訟のお話がございましたけれども、数多く裁判が提起をされています。特に公職選挙法の中でも選挙人名簿の登載について争う手続がございまして、これを利用して幾つも訴訟が出されていました。ただ、その訴訟が出ても、さっきのアラン訴訟というのもそうでありますけれども、これは主権在民ということの裏返しとして日本国籍を持つ人、外国人は選挙人名簿には登載されないというように判決は繰り返されてきたわけであります。
そういう時代の流れの中で、突然平成7年のあの判決が出てきたわけであります。これはそういう意味で、それまでの通説的な理解に対して私は間違いなく警鐘を鳴らすという意味での最高裁の判決かなと思いました。これは人によって受け取り方はさまざまだったであろうと思いますが、私自身も選挙法の解釈にある程度かかわった立場でありましたので、こうやってあえて従来当たり前のように言われたことに対して違った考え方が出されたことはすごく大きな意味があるなというふうに思った次第であります。
判決をよくよく読んでみますと、単純に外国人に地方参政権を認めるとは書いていないのです。外国人の中でもと書いてありますが、外国人の中でも永住者等であって、その地域と密接なかかわりを持つに至った者に対しては選挙権を認めるという立法は違憲ではないと、こう言っているわけであります。だから、外国人の中でも特にかかわりの深い永住者の方については別の考え方をしてもいいですよ、それも地方選挙に限ってそういう考え方をしてもいいですよと最高裁の判決に書かれているわけであります。これだけ限定的に注記をして書いてあることの意味は非常に深いものがあります。
これと類似をしていますのは、よく出されます1票の重みの訴訟であります。これも皆様御案内のように数多くの訴訟が展開されますけれども、1票の重みは違憲状態になっていたと、そういうように判示されることがあります。これは最近ですと、衆議院ですと2倍以上とか、参議院でも5倍とか6倍とか7倍とか、大分大きくなってきますとそういう違憲状態というふうに判決をしたりします。そういうようなことで、最高裁は立法者に対してメッセージを投げかけるということを特に選挙法の分野では繰り返しやってきているのです。そういうメッセージを受けて、国会では1票の重みが違憲状態にあると最高裁も判決をしたのだから、我々で選挙法を直しましょうというような話を始めるわけですね。この辺は戦後の憲法実務といいますか、法律の世界で立法権と司法権とのチェック・アンド・バランスの関係が効いてきたところなのです。そういう選挙法の世界におきまして、最高裁が傍論的な記述とはいえそういうように書いているということは、これは立法者としても重く受けとめてもらわなければならないと、そういうように受け取るものだと思います。それが最近の実務上のやり方であるだろうというふうに考えているわけであります。
ですから、議員の御指摘のように法律論的にいって、これは先例的な価値が100%あるものかといえば、確かにこれは傍論的記載でありますので、そういうところではないかもしれない。ただ、特に選挙法などで繰り返されている最高裁のメッセージとして考える場合に、立法政策の問題だとまさに判決でも言っているわけでありますが、立法政策を行使する国会において速やかに検討してほしいというメッセージが通常は込められていると見られるものではないかなというように思う次第であります。
◯副議長(斉木正一君)9番福本議員
◯9番(福本竜平君)ありがとうございました。
では次に、外国人参政権の問題を
地方自治の性質の検討から考えてみたいと思います。
地方公共団体の自治権の根拠を、国家の統治権から伝来した後国家的な実定法的権利とする伝来説に見出す場合、
地方自治権は国家統治権の委任に基づく行政権の一種にすぎません。そして国会の立法権や内閣の行政権を超えることはできません。つまり、例え外国人に地方参政権を与え、それに基づいて国民主権に反するような条例ができたとしても、国の法律を改正して日本国民自身によってこれを拒絶することができることになって、その場合、国民主権原理は貫徹されると思います。よって、伝来説に立つ場合は外国人地方参政権付与は必ずしも違憲の評価を受けるものではないと私も認識しております。
ちなみに、現在我が国の
地方自治権の根拠としては伝来説の中でも一切の
地方自治を国家から伝来するものとし、自治の範囲を極めて狭く解釈した承認説は支持を失っております。国家の立法作用によって
地方自治の本旨を損なわない程度において、地方を起立することが許されるとされる制度的保障説が今の我が国の定説であります。
では、この制度的保障説に立って
地方自治権の根拠を求めるとき、外国人地方参政権の問題はどう扱われるのでしょうか。この場合、
地方自治の本旨の解釈において
地方自治を拡大して理解する場合と、自治の範囲を狭く解釈する場合によって同床異夢になる可能性があると思います。すなわち、
地方自治の保障を拡大強化して国や内閣が介入し得ない部分がふえる場合は、国民主権原理が貫徹されないことになっている。要するに、昨今の
地方分権の流れの中にあっては地方の自治権を保障拡大すればするほど外国人に地方参政権を与えることは難しくなるという、いわゆるトレード・オフの関係が成立するのではないかと思います。このように外国人に地方参政権を与えることは図らずも
地方自治の拡大と相入れず、
地方分権の流れと逆行することになるという側面につき、
地方分権の時代を生きる知事としての御理解がどういうものかお聞かせください。とりあえずここまで。